【インタビュー】転勤族妻と仕事――正社員・契約社員で働くのは難しい?前編

「転勤族の妻が働くのは難しい」定説となっている、この言葉は本当なのか?採用現場に近い人の言葉から、「転勤族の妻」の市場価値を探ってみるために、お話を聞いてきました。

インタビューさせて頂いたのは、人材紹介会社でコーディネーターとして活躍中のNさん。企業と求職中の人をマッチングするのが仕事という彼女に、転勤族の妻の市場価値についてお聞きしました。前編「市場価値」と後編「就活アドバイス」の2記事に分けて公開します。

正社員・契約社員の採用は、「年齢」が大きなファクターとなる

――まず、現在のお仕事について聞かせてください。

Nさん:人材紹介会社で、主に正社員・契約社員の求人案件を扱っています。求職中の方と面談を行い、企業からの募集要項に合わせてマッチングして紹介するのが役割です

――「転勤族の妻」、具体的な人物像では「30代~40代くらい、主婦、場合によっては子供がいる、転勤アリ」。そんな方の、転職市場での印象について聞かせてください。

Nさん:まず、転職市場では、30歳が大きな節目。今聞いた条件で考えると、30を超えている時点で、スキルがなければ正社員・契約社員の採用対象としては難しい場合が多いと思います。書類で落ちてしまう場合も多いかと

――最初から厳しい状況ですね。

Nさん:もちろんこの限りではないです。スキルがあれば、企業側もOKな場合もある。そして私が担当するのは正社員・契約社員が多いのでこの回答ですが、派遣社員や短時間勤務の場合を含めると、もっと広いです。ただ、懸念事項が多いとは感じます。

懸念事項とは?転勤族妻はこれが多い

――懸念事項とは?

Nさん:ちょっと聞きなれない言葉を使ってしまいました(笑)企業が採用をためらう事項のことです。たとえば、子供がいる、近くに面倒を見られる人がいない、二人目三人目の妊娠・出産の可能性がある、引っ越しでやめてしまう可能性がある。そういった、「採用しても辞めてしまうかもしれない」要素は、採用をためらわせる要因となります。スキルや年齢、子供の有無という要素の他に、転勤族と聞くと、こうした「企業が採用をためらう事項」が多いのかな、という印象を受けます。

――それがあると採用は難しい?

Nさん:スキルがあって実績もある人なら、多少のことは企業側の方で「飲んで」くれる場合があります。そして、本人の仕事に対する前向きさによって採用される場合もあります。ただ、同条件の求職者がいれば、やめる可能性の少ない方を選ぶ企業が多い、ということです。なのでまず、それらの事項をクリアすること、それを補うくらいのメリットの提供を意識する必要があるかと。

プラス材料もないわけではない

――そう聞くと、なかなか難しそうですね。

Nさん:ただ、転勤族の妻と聞くと、プラス材料もあると感じます。たとえば、やめた理由。中途採用の場合「前職を辞めた理由」や「ブランクの理由」を気にする採用担当者は多い。そこから、仕事への姿勢が見えてくるからです。その点、「夫の転勤で辞めた」「育児のためのブランク」という理由は、やめたくて辞めたわけではない、仕事が嫌だったわけではない、ということで、「やむを得ない理由」とみなされます。仕事をする上で前向きに受け取ってくれる採用担当者は多いと思います。

具体的な例でいえば、26歳で若いけれど職をコロコロ変わっている人と比較して、38歳で子持ちでブランクありでも、仕事に対して前向きな人を採りたいという担当者はいらっしゃいます。

また、これは私の肌感覚ですが、夫の転勤についていくために退職した女性という人は、有能な人も多い。英語ができたり、専門のスキルをもっていたり。専門のスキルはなくても、協調性が高くて有能な女性だったり。同じような印象を持っている方は多いんじゃないかと思います。

――参考になりました。

Nさん:転勤族の妻、というのは、ちょっと「懸念事項」の多い人なのかな、という印象です。厳しいのは確かですし、確かにキャリアを継続しづらいなどの条件はあるかもしれませんが、条件をひとつひとつクリアして、それを上回るアピールができれば、悲観する必要はないかと思います。

私は正社員・契約社員の案件が中心なので、まず30代以上という点でかなり厳しさはあると感じますが、派遣やパート勤務など、雇用形態に関わらず考えると、さらに可能性は広く、十分に就職活動は可能だと感じます。

――ありがとうございました。

お話を聞いて――転勤族妻の市場価値とは?

Nさんにお話を聞いて感じたことは、「転勤族妻」の就職活動が難しいことは事実だということ。でも、ただ「難しい」「転勤族だから」というところで終わらせず、「難しい理由」を分解して考えることが必要だということ。いわゆる、Nさんの言う「企業が採用をためらう事項」のクリア、もしくは「それを上回るアピール」を実現することが大事だと感じました。

ただ、採用されたとしてもキャリアの継続は難しいので、そこで定住するのか、数年おきに仕事を変わる必要があるのは事実です。

とはいえ、Nさんの言葉で印象に残ったのが、「キャリアを継続できないから」という理由だけで外で働くのを諦めるのはもったいない、ということ。

なぜなら、たとえ3年間であっても、3年分のキャリアや実績にはなるから。Kさんが繰り返したのは、「スキルや実績が大事」という言葉。3年を積み上げていくことは、確実にスキルや実績の上積みになり、それは無駄にはならないとのことでした。

では次回、就職活動をする際に気を付けたいことについて、さらに詳しくアドバイスをもらってみたいと思います。

後編はコチラ⇒転勤族妻と仕事――正社員・契約社員で働くのは難しい?後編

(インタビュー日:2016年1月28日)

関連記事

【インタビュー】転勤族妻と仕事――正社員・契約社員で働くのは難しい?後編

転勤妻の仕事は在宅や起業がオススメ!は本当なのか?

転勤族の妻、7つの「働き方」。在宅ワーク?派遣?それとも、短期?

【インタビュー】パート求人ライターが語る、転勤族の妻・主婦の再就職